クレジットCIRモデルのキャリブレーション

ざっくり解説

CIRモデルは金利モデルの教科書にだいたい載っている。たしかに金利モデルに使うこともできるが、市場ではほとんどの場合、クレジットモデルとして用いられている。

CIRはマイナスにいきにくいため、クレジットにおけるハザードレートを表現するのに適している。ハザードレートは条件付き確率であり、マイナスになることはあってはならないからだ。一方で、金利については、特に円やユーロではマイナスにいってもらわないと困るため、CIRを使うことはまずない。
 
CIRではハザードレートが非心カイ二乗分布に従うが、これはざっくりとしたイメージでは正規分布に従う変数を二乗したものと考えればよい。
正規分布自体はマイナスの値を取りうるが、それを二乗すればマイナスになることはありえない。
 
CIRモデルのパラメーターには、平均回帰速度を表すKappa、平均回帰水準を表すTheta、ハザードレートの初期値を表すX0、ハザードレートのボラティリティを表すSigmaがある。
このうち、KappaはHull-Whiteと同様に、適当な値で固定する。
ThetaとX0はクレジットのボラティリティではなくむしろ分布の期待値に関連するため、CDSスプレッドに合わせる。
一方で、分布の広がりを表すSigmaについては、CDSスプレッドにはクレジットボラティリティは織り込まれていないため、CDSオプションに合わせたいところだ。
しかし、そのようなデータはほとんど取得できないため、SigmaはCDSスプレッドのヒストリカルデータから推定することになる。
よって、KappaとSigmaを固定して、残りのThetaとX0をCDSスプレッドにキャリブレーションすることになる。
 
クレジットのCIRパラメーターを全てCDSスプレッドに合わせているケースも見られるが、そうすると、パラメーターの推定結果が時系列でかなり不安定になり、特にSigmaが変な値となって、離散化の仕方によっては、ハザードレートのシミュレーション値が頻繁にマイナスになってしまうため、推奨されない方法だ。

参考文献

Modern Derivatives Pricing and Credit Exposure Analysis: Theory and Practice of CSA and XVA Pricing, Exposure Simulation and Backtesting (Applied Quantitative Finance) (English Edition)