クリケットオプションとは

ラチェットオプションとも呼ばれる。

これは株価のリターンに関するオプションである。ペイオフの基本形は、

max(S(T2)/S(T1) – 1 – K, 0)

である。エクイティの市場参加者は株価の絶対水準というよりはリターンを見ていることから、クリケットオプションはエクイティ商品によく見られる。ペイオフの形から、これは株価の平均変化率のオプションになっていることがわかる。

クリケットオプションはたいてい、上記のリターンに関するオプションのポートフォリオになっている。よくあるのは、3ヶ月ごとのリターンのオプションが連なっている商品だ。満期2年であれば、4×2で合計8個のオプションから成る。

クリケットオプションでは、プレミアムを安くするために、ローカルキャップが追加されることがある。つまり1つ1つのオプションについて、ペイオフに上限が設定される。それとは別に、グローバルキャップというものもある。これは、1つ1つのオプションペイオフの合計に上限を設定するものである。キャップを設定することでプレミアムを安く抑えることができる。

クリケットオプションのプライシングで重要なのは、2個目以降のオプションについて、分母のS(T1)は約定時にはまだ決まっていない、ということだ。これは将来時点に決定される。S(T2)に関するオプションと考えたとき、そのストライクが将来にならないと決まらないのである。

このため、クリケットオプションの評価は、将来時点T1におけるフォワードスマイルの影響を強く受ける。将来時点T1における、満期(T2 – T1)のスマイルが反映されないといけないが、これは将来時点のスマイルなのでフォワードスマイルである。

今まで書いてきたように、フォワードスマイルは、プライシングモデルが生成するスマイルのダイナミクスによって決まる。スマイルのダイナミクスはプライシングモデルによって全く異なってくるため、フォワードスマイルに依存する商品は、それだけモデルリスクがあるといえる。フォワードスマイルに依存する商品の典型例として、クリケットオプションが文献でよく挙げられている。