クオンツの種類⑵ リスククオンツ/キャピタルクオンツ

2つ目のクオンツは、リスク計測や資本計算をやっているクオンツで、リスククオンツやキャピタルクオンツともよばれる。主に銀行や証券会社のリスク管理部門に生息している。

 

VaR計測のモデルや、それに付随するバックテスト、ストレステスト、シナリオ分析などについて、そのロジックの開発、検証をやっている。これらのロジックのことをリスクモデルといい、デリバティブクオンツが開発しているプライシングモデルとは区別する。
 
規制資本計算も彼らの重要な仕事である。
市場リスク資本はVaRがベースになるし、信用リスク資本ではいわゆるPDとLGDをヒストリカルに推定する話がメインになる。さらに、カウンターパーティリスク資本というのもあり、こちらはSA-CCRといわれる規制モデルで計算することになる。加えて、CVAリスク資本というのもあり、これは計算がかなりやっかいではあるが、日系金融機関であれば、標準的手法という規制モデルを使うことになるだろう。
これら資本計算のロジックは、最近では銀行オリジナルのものから画一的な規制モデルを使う方向にトレンドが変化している。規制モデルはシンプルではあるものの、それを理解して実装するには、やはりクオンツの素養がある人材を置いておかないといけない。
 
プライシングモデルとリスクモデルは考え方が全く異なり、前者はQメジャー、後者はPメジャーの人たちである。つまり、前者はリスク中立確率での期待値計算をやっているが、後者は実確率での期待値計算となる。実確率とは、リアルメジャーともいうが、つまりはヒストリカルで推定したパラメーターをインプットとして用いる。
 
使われる数学も全く異なる。プライシングモデルでは確率論だが、リスクモデルでは統計学を用い、これらはかなり発想が異なる学問である。リスクモデルではヒストリカルデータをもとにパラメーター推定や検定を行うため、統計学が必須となっている。数学のややこしさとしては、プライシングモデルに比べればリスクモデルの方がかなりシンプルである。
 
使われるプログラミング言語も異なる。プライシングモデルではC++だが、リスクモデルでは伝統的にはRが用いられており、最近ではPythonだろう。場合によってはSASを用いている場合もあるが、これは自分でプログラミングできない人向けのものであり、SASを売っている会社の手厚いサポートを受けられることから、自前でモデルを作ってメンテナンスしていく自信のない会社が使っているイメージである。あとは、リスククオンツだといまだにVBAを多用している現場もありそうだ。
リスクモデルの運用には大量のヒストリカルデータを用いるので、SQLなどデータベースの取り扱いに慣れているといいだろう。
 
デリバティブクオンツは市場慣行をウォッチしていないといけないが、リスククオンツやキャピタルクオンツは、規制動向をウォッチしていないといけない。
クオンツ志望の就活といっても、デリバティブクオンツかリスククオンツかによって仕事がかなり異なるため、注意が必要だ。

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