キャッシュセトルIRRスワップション 続

欧州で一般的なキャッシュセトルIRRのスワップションは、

・ペイオフのアニュイティは、Liborのパーレート、つまりスワップレートで割り引く
 
・スワップレート自体の計算で前提にしているアニュイティは、OISのゼロレートで割り引く
 
というのが問題だ。
ペイオフの期待値を求めるには、Liborパーレート割引のアニュイティメジャーでのスワップレートの分布が必要になる。
しかしながら、市場で観測できるスワップレートの分布は、OISゼロレート割引のアニュイティメジャーにおける分布である。
メジャーが異なるため、期待値を求めることができない。
 
市場では最も簡便な方法として、Liborパーレート割引のアニュイティメジャーにおける期待値と、OISゼロレート割引のアニュイティメジャーにおける期待値が、等しいと仮定して評価している。
つまり、期待値計算には通常通りBlack式ないしはBachelier式を用いて、外から乗じるアニュイティのみをLiborのパーレート割引のもので置き換える。
 
しかしこの方法では裁定機会の存在が示されており、以前より問題だと指摘されてきた。
 
具体的には、プットコールパリティが成り立たない。つまり、コール価格からプット価格を差し引けば、フォワードスワップ時価に一致しないといけないが、そうならない。
フォワードスワップ時価は、フォワードスワップレートとストライクの差分にアニュイティを乗じたものだが、
このスワップ時価に出てくるアニュイティは当然、通常のOISゼロレート割引ベースのアニュイティである。
しかし、一方で、コール価格とプット価格の評価に用いられているアニュイティは、Liborのパーレート割引ベースになってしまっているので、これはスワップ時価と一致しない。
 
さらに言えば、ATMにおいてコール価格とプット価格は一致しないといけないが、そうならない。
プットコールパリティから、ATMにおいてはフォワードスワップレートとストライクが一致しているため、フォワードスワップ時価はゼロになるため、これはつまりコール価格とプット価格が等しいということだ。
しかしながら、プットコールパリティが成り立っていないので、ATMにおいて、コール価格のボラティリティと、プット価格のボラティリティが一致しない。
コール価格から出したボラティリティスマイルと、プット価格から出したボラティリティスマイルが、明らかに異なる水準になってしまい、ATMでスマイル曲線がつながらない。

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