Risk.net Updates: モデルリスク管理の重要性

Model risk management is evolving: regulation, volatility, machine learning and AI – Risk.net

パンデミックによるロックダウンの結果、石油消費量が急減し、WTI先物価格がマイナスになった(物流・貯蔵ストレスによるもの)。オイルオプションでは石先物価格がプラスの前提で対数正規分布ベースのインプライドボラティリティでオプション価格が呈示されていたが、先物価格がマイナスになったことで対数正規分布ベースで計算はできなくなり、正規分布ベースのインプライドボラティリティにシフトした(これは以前にマイナス金利下で金利オプションに起きた変化と同じである)。

借り手の信用リスクを評価するためのクレジットスコアリングモデルについても、パンデミック時に巨額の政府支援・バラマキが行われたことにより、信用リスクの評価に苦慮することになった。実際、GDP成長率は大幅にマイナスになったので普通なら倒産件数が増えるはずだが、政府支援のおかげでパンデミック前よりも倒産件数は少なくなった。

これらの事態を受け、過去データのみからモデルを構築することの危険性が再認識されたのは間違いないだろう。過去に構築した既存モデルについて、その使用範囲やキャリブレーション方法を、足元の状況に応じてタイムリーに調整する必要がある。

近年応用が進んでいる機械学習モデルについては、解釈可能性、外部モデル依存性などがポイントになる。

複雑な機械学習モデルを用いる場合、インプットとアウトプットの関係がわかりにくく、解釈可能性が論点になることが多い。いわゆるShapley valueなど、モデルの解釈を容易にするための手法を有効に活用することが求められる。

外部モデル依存については、特に自然言語処理において、GPT-4などの外部モデルを所与として、目の前にある特定のタスクに適応させるケース(転移学習)も多い。このように、学習済みモデルを下敷きにして、自分のタスクを解けるようにそれを拡張する場合、学習済みモデルがどのような教師データで学習され、どのようなロジックでパラメーター推定されたのかなど、外部モデルがブラックボックス化する可能性がある。そのような場合であっても、モデル出力のバイアスなど問題点を分析できる体制が必要になるだろう。

リスク測定の潮流としては、銀行独自の内部モデルの使用が以前より制限され、規制当局が設定した標準モデルの使用が促進されている。内部モデルが複雑な場合、そこから生じるリスクを管理するのは困難になり、透明性を欠くことにもなりやすい。また、内部モデルの中に自社にとって有利になるようなバイアスを内在させるインセンティブが金融機関にはある。これらの点から、規制当局は内部モデルへの依存に警戒感を示してきた。

しかし全ての金融機関に対して同じモデル、同じフレームワークの使用を強制することは評価の多様性をなくし、市場の歪みにつながる。内部モデルの開発が減少すれば、それはつまり、リスク管理高度化やイノベーションを阻害することになる。また、標準モデルにも欠陥はあり得るわけであり、皆が同じ欠陥のあるモデルを使用すると、モデルエラーが金融システム全体に及ぼす影響が過大になる恐れもある。

よりシンプルな標準モデルへの移行は、モデルリスク管理(Model Risk Management; MRM)の観点から言えば、MRM原則の遵守が一部、簡素化されることにはなるだろう。