低次元マルコフモデルとマーケットモデル

金利の期間構造モデルには大きく分けて2種類ある。低次元マルコフモデルとマーケットモデルである。

低次元マルコフモデルは、1つか2つのファクターでイールドカーブ全体を説明する。
全ての満期の割引債価格が、少数のフャクターの関数になっており、将来時点におけるファクターの値さえわかれば、それを割引債価格の関数に代入することで、その時点におけるイールドカーブ全体が作れる。
 
ショートレートモデルというのはこれの特殊なケースであり、ショートレートが1つか2つのファクターから求められる。将来時点におけるショートレートの値がわかれば、それをもとに全ての満期の割引債価格が求まる。
 
これはつまりファクターが満期に依存していないということである。低次元マルコフモデルでは、満期が異なる多数の割引債価格から得られるイールドカーブを、1つか2つのファクターに集約して表現する。よくあるのは、1つ目のファクターでカーブ全体の水準、2つ目のファクターでカーブの傾きを表す。
 
一方で、マーケットモデルでは、市場で見えている満期ごとにファクターを設定するので、ファクターが1つや2つでは済まない。40とか60とかのオーダーになる。6ヶ月Liborをファクターにすれば、最長満期30年なら60個といった具合だ。これら多数のLiborを1つの測度に揃えて、イールドカーブ全体の動きを表現する。
 
このため、低次元マルコフモデルと比べて、イールドカーブのそれぞれの満期ごとに、きめ細やかなモデリングが可能である。さらに、異なる満期の金利間の相関を柔軟に設定することができる。しかしファクターが多すぎるため、プライシングにはモンテカルロシミュレーションを用いることになる。

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