インプライドPDとヒストリカルPD、行内格付け

こちらもおすすめ

【初心者向け】CVAモデルの体系的まとめ | Quant College

解説

デフォルト確率にはその推定の元ネタによって2種類があり、インプライドPDはマーケットのCDSスプレッドをもとに設定したもの、ヒストリカルPDは過去のデフォルト実績をもとに推定したものだ。
 
市場慣行は既にインプライドPDに収束しているのだが、一部の邦銀はいまだに、CDSがない先のCVAにヒストリカルPDを使っているようだ。
それはインターナルな行内格付けをもとに設定した行内PDというもので、行内格付けは過去のデフォルト実績に基づいているため、ヒストリカルPDの一種と考えていいだろう。
 
CVA計算に行内PDを使っていいのかというと、よほどやむを得ない理由がない限りはダメということになるだろう。
CVAには大きく分けて、プライシングCVA、会計CVA、規制CVAがある。
 
プライシングCVAは、フロントでプライスを提示する際に織り込むCVAであり、ヒストリカルPDはマーケットスタンダードではないため、ここでは使えないだろう。
また、フロントはCVAのヘッジにCDSを用いるが、CDSスプレッドから求まるインプライドPDの動きとヒストリカルPDの動きは全く異なるため、ヘッジがワークしない。
 
会計CVAでは、特にIFRSでは、出口価格を見積もる必要があるため、マーケットスタンダードではないヒストリカルPDの使用は許可されないだろう。
日本基準ではそこがあいまいだが、今後適用になっていく新しい日本の時価算定基準では、IFRSとほぼ同一になるため、出口価格と相容れないヒストリカルPDはアウトになってしまう。
 
規制CVAでは、標準的手法によるSA-CVAを使う銀行が多いと思われるが、ここでも、市場のインプライドな情報を使うことが求められており、CDSがない先については、他のCDSからプロキシースプレッドを求めてそれを使うことが要求されている。
 
証券会社は、銀行とは違って行内格付けのようなものは設定しておらず、情報ベンダーのプロキシースプレッドを購入しているケースが多い。
 
問題は銀行であり、規模の小さい事業法人なども相手にしているため、ほとんどの顧客についてCDSがないが、行内格付けは融資先であれば必ず設定されているため、それを使おうというわけである。
さらに、プロジェクトファイナンスやファンド向けなど、銀行特有のローンに紐付いたスワップ取引というのもある。これらについてプロキシースプレッドを推定するのは困難だということで、行内格付けを使いたいようだ。
しかしながら、上で見てきたように、その承認を得るのは難しいものと思われる。

こちらもおすすめ

【初心者向け】CVAモデルの体系的まとめ | Quant College