長期の為替商品のプライシングでは金利ボラティリティの影響が無視できないため、国内金利と外国金利も確率的に動かす3ファクターモデルが用いられる。
一方で、短期の商品では金利ボラティリティを無視して1ファクターモデルが用いられる。この場合、スポット為替とフォワード為替の相関は100%になる。というのは、
フォワード為替=スポット為替×外国金利DF÷国内金利DF
において、金利が確定的だとDFがいずれも確定的なわけだから、フォワード為替はスポット為替に確定的な係数をかけているだけだからだ。
一方で、金利も確率的に動かす3ファクターモデルでは相関は100%ではない。そして相関の上限は100%だから、金利も確率的に動かすことによって、スポット為替とフォワード為替の相関を下げる効果がある。
これは長期の為替商品の評価にどのような影響があるだろうか。
例えば、ノックアウトPRDCを考える。スポット為替がバリアにヒットするとノックアウトする。このため、評価としては、ノックアウトしない場合のペイオフが寄与することになる。ノックアウトするときの残存価値は、為替クーポンに由来する通貨オプション価値に依存する。そして通貨オプション価値は将来のスポット為替、つまりフォワード為替に依存する。ノックアウトするかどうかはスポット為替に依存するが、そのときの残存価値はフォワード為替に依存する。以上のことから、相関が下がることによって、ノックアウトしない場合の残存価値が影響を受けることがわかるだろう。
長期のFX TARFやFX TARNなどの商品も同様である。ターゲットノックアウトするかどうかはスポット為替に依存する。一方で、ターゲット判定時の残存価値は、将来の為替リンクのキャッシュフロー、つまりフォワード為替に依存する。金融機関から見ると、
・スポットが円安に行くほどターゲットノックアウトしやすくなる
・フォワードが円高に行くほど為替リンクのキャッシュフロー評価が上がる
という設計が多いだろう。この場合、ターゲットノックアウトするケースでは、相関が低いと、フォワードがそれほど円安に行かない。すると、ノックアウト判定時の残存価値はそれほど低くないだろうと考えられる。