SABRモデルのマイナス金利対応

SABRモデルはそのままではマイナス金利に対応できない。

 

そもそもダイナミクスに金利のβ乗が出てきているので、これは金利がマイナスだと計算できない。
イメージとしてはマイナス値の平方根を求めようとしている感じだ。
 
さらに、Hagan近似によるモデルボラティリティの式にはlog(F/K)が出てくるが、これも金利FがマイナスでストライクKがプラスだと計算できない。
マイナス値の対数は求められないからだ。
 
マイナス金利対応としては2つのパターンがある。
 
⑴金利とストライクをシフトする
⑵βをゼロにする
 
⑴の方がメジャーだが、会社によっては⑵のアプローチもよく見かける。
 
 
⑴のシフトアプローチは、マイナス金利がだめならシフトしてプラスにしてしまおう、というものである。
これにもいくつかの方法がある。
 
最も簡単なのは、Hagan近似によるモデルボラティリティの式において、
・金利FにはF+シフト幅
・ストライクKにはK+シフト幅
を代入する、というものだ。
QuantLibのShiftedSABRもこの方法を用いている。
 
もう一つの方法としては、ダイナミクスの金利にシフト幅を導入して、あとはHaganのSABR論文と同じ手順でモデルボラティリティの式を導出する、というものである。
こちらの方が正確な近似になっているはずだ。
 
 
⑵はNormalアプローチで、βをゼロにすると、金利のダイナミクス単体でみるとNormalモデルと同じになる。
こちらのアプローチにもいろいろな方法がある。
 
一つ目は、Hagan近似の式においてβをゼロにする、というものだ。
これが最も簡単であり、一部のシステムベンダーでも採用されているようだ。
 
二つ目は、NormalSABRモデルの準解析解を用いる方法だ。
βがゼロの場合をNormalSABRというが、この場合に限っては、Hagan近似のような近似が不要であり、準解析解があるため、それを使おう、というものだ。
 
さらに、この準解析解にもいくつかある。
メジャーなのはWilmottマガジンに載った方法と、Riskマガジンに載った方法の2つがある。

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