CoCo債のプライシング: 3つのアプローチ

CoCo債は、Contingent Convertible Bondの略であり、偶発的転換社債などと訳されている。

CoCo債とは、大手銀行がバーゼル3な資本積み増しのために発行する、特殊な転換社債である。
特徴は、発行する発行体の自己資本比率が一定水準を下回ったら、
・株式に強制転換される
あるいは
・債券の元本が大幅に削減される
という点である。
 
株式に転換される場合、自己資本比率が下がっている状況では、株価がかなり下がっているはずなので、投資家は大きな損失を被る。
債券の元本が削減される場合も同様に、投資家は大きな損失を被る。
 
通常の転換社債との違いは以下の通りで、特徴は正反対である。

・通常の転換社債は、投資家にオプションが与えられており、株価が上がった場合に株式へ転換できる。

・CoCo債は逆に、発行体にオプションが与えられており、株価が下がった場合に株式へ転換されてしまう。

 
さて、CoCo債の時価評価にはいろんな方法があるが、以下3つのアプローチに分けられる。
 
⑴エクイティデリバティブアプローチ
⑵クレジットデリバティブアプローチ(Reduced Form Model; 誘導型モデル)
⑶Structural Model; 構造型モデル
 
 
 
⑴は、株価のバリアオプション評価を応用するもので、
 
プレーンな債券
+ 元本部分のノックインフォワード
− クーポン部分のノックアウトオプション
 
と分解して評価する。
株価のダイナミクスとしては、シンプルな幾何ブラウン運動や、ジャンプを入れている文献もよく見かける。
 
 
 
⑵は、ノックインする場合の損失に見合うクレジットスプレッドを求めて、クレジットスプレッド込みのディスカウントファクターで割り引くアプローチである。
クレジットスプレッドは、クレジット・トライアングルから、フラットなハザードレートと、損失率の掛け算で求まる。
フラットなハザードレートは、累積生存確率さえ出せれば、そこから以下の式で逆算できる。
 
exp(−フラットなハザードレートx T)
=累積生存確率
 
時点Tにおける累積生存確率は、株価がダウンバリアにヒットする確率から計算する。
この確率は株価に幾何ブラウン運動を仮定すれば解析的に求められる。
 
 
 
⑶は、企業価値に何らかのダイナミクスを仮定して、その企業価値がダウンバリアにヒットしたらノックインする、と考えるアプローチだ。
 
・ノックイン時刻までのクーポンを割り引き、
・ノックイン時点の強制転換あるいは元本削減のペイオフを割り引き、
これらの期待値として評価する。
 
企業価値に幾何ブラウン運動を仮定すれば、この期待値が解析的に書ける。
その他には、やはり企業価値にジャンプを入れている文献も見かける。
 
 
 
⑴や⑵は、自己資本比率トリガーを株価トリガーにすり替えて評価しているが、これは厳密ではないだろう。
そういう意味ではバランスシートを直接モデル化する⑶が正攻法という気がするが、
⑴や⑵の方が、必要なインプットデータをそろえやすいだろう。
 
 
 

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