なぜATMボラティリティによるプライシングは一般に正しくないのか?

市場価格と合わないからである。

 
もちろん、プライシング対象のオプションがATMストライクなのであれば、ATMボラティリティを解析解に入れればよい。
しかし、一般に売買されるオプションの多くは、ストライクがATMから離れている。
このため、ATMボラティリティを使ってしまうと、ATMストライクの市場価格になってしまう。
 
実際には、ATMではないストライクであっても、一部のメジャーなストライクには市場価格がある。
マーケットメイカーは、この観測可能な市場価格の間をスマイルモデルで補間・補外している。
このように、市場価格が付いているストライクのインプライドボラティリティを曲線でつないだものを、ボラティリティスマイルという。
 
ATMとは限らない任意のストライクについて、バニラオプションの市場価格を知ろうとすると、マーケットメイカーに価格を聞くことになる。
 
このときマーケットメイカーは当然、ビッドアスクスプレッドに加えて対顧ざやなどを乗せた価格を提示する。
しかし、あれこれ上乗せする前の土台は、スマイルモデルでプライシングした価格である。
 
もちろんその価格は、ATMボラティリティでプライシングした価格とは異なる。
したがって、ATMボラティリティで評価しても市場価格とは合わない。
市場価格と整合的にプライシングするには、スマイルモデルで補間・補外したモデルボラティリティで評価しないといけない。
 

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