モンテカルロ法の安定性

モンテカルロ法はその手法や設定の違いで評価額に差異が出るのかとの質問を頂いていた。

答えはイエスであり、その通りというほかない。
これはモンテカルロに限らず数値計算手法全てにいえることであり、数値積分やツリーやPDEでもそうである。
 
ただし、PDEの陽解法と陰解法など、手法そのものの違いでそれなりの差異が出るのはやむなしとしても、設定を少し変えたぐらいで評価額が大きく変わるようであれば、数値計算の安定性がないことを意味するため、さらに試行錯誤を行って改善させる必要がある。
実務では数値計算手法の安定性はかなり慎重に検証してからプライシングエンジンをリリースするため、普通は安定性は担保されていると考えて良い。つまり、設定を少し変えると1円単位での差異は当然出るものの、大きな差異は出ない、というか、出てはいけない。出るのであれば、リリースすべきではないだろう。
 
安定性がないのであれば、グリッドの作り方など、多数ある設定のパラメーターを変えてみたり、それでも安定しなければ、手法そのものを変える必要があるだろう。ここで手法というのは、モンテカルロであれば、分散減少法のうちどれとどれを使うのか、あるいは、そもそも擬似乱数ではなく準乱数を使うのか、といったことである。
それでもだめなら数値計算手法それ自体を変える必要があるかもしれない。
 
しかしながら、モンテカルロであっても、分散減少法を駆使して、かつ、ある程度グリッド数やサンプル数など計算量を増やせば、時価が安定しないというケースはあまりない。
問題なのは、グリークスである。これは時価を数値微分して求めるのだが、PDEに比べるとモンテカルロではグリークスを安定させるのは難しい。そのためにパスワイズ微分など、多くの手法が開発されている。

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