マルチアセット指数のデリバティブ

マルチアセット指数を参照する仕組債などの商品が流行っているようだ。マルチアセット指数とは、それぞれの外銀が独自に作成した指数で、株式、債券、コモディティ、不動産指数など、多くのアセットクラスに資産配分したポートフォリオのパフォーマンス指数である。ゴールドマンサックス、バークレイズ、ソシエテジェネラルなどが独自の指数を作っている。

 

資産配分の比率については、事前に設定された目標ボラティリティを達成するように動的に組み替えられる。
目標ボラティリティとは、インプライドやヒストリカルではなく、日中も含めた値動きから計算される実績ボラティリティ、つまりいわゆるリアライズドボラティリティである。たいてい3%や5%など、顧客説明しやすいようにキリの良い低い数値に設定されている。このようなマルチアセット指数のことを、ボラティリティコントロール指数ともいう。

 

組み入れ比率については公開されていないように見えるが、指数値はブルームバーグでも確認可能である。
 
このようなマルチアセット指数に依存するデリバティブの評価方法については、株式デリバティブなどと同様でいいだろう。指数を1つの株価指数だと思って通常の株式デリバティブと同様に評価すればよい。

 

モデルも株価モデルと同様だが、ボラティリティに用いる目標ボラティリティが固定値で、満期やストライクに依存しない。よって、ローカルボラティリティモデルを用いたところで、ローカルボラティリティがフラットな固定値になる。
 
満期の長い仕組債を評価するときは、セオリーとしては金利も動的に動かすハイブリッドモデルとなるが、
目標ボラティリティが3%などとかなり低いので、金利とのハイブリッドモデルはキャリブレーションが困難だ。これはハイブリッドモデルのキャリブレーションについての記事でも書いたが、先に金利モデルだけをキャリブレーションして、それを所与としてマルチアセット指数のボラティリティパラメーターをキャリブレーションする。このとき、目標ボラティリティから金利ボラティリティの分を除去した残りがマルチアセット指数のボラティリティパラメーターに対応するが、満期が長いと金利ボラティリティが目標ボラティリティを簡単に上回ってしまう。
よって、金利は動かさないシングルファクターのモデルで評価することになるだろう。

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