クレジットシミュレーションの注意点

ざっくり解説

クレジットモデルを仮定して将来のデフォルト確率をシミュレーションするうえで、注意すべきなのは、デフォルト確率は確率なので、マイナスになってはいけない。金利がマイナスになるのは、直感には反するが、理論に矛盾が生じるわけではない。しかし、確率がマイナスになると、それは裁定機会が生じていることを意味するため、それに基づいて得られた価格に妥当性はない。

クレジットモデルは金利モデルを参考に作られているが、そのまま適用するわけにはいかない。マイナスを許容しないことから、ハザードレートにCIRモデルか、それを拡張したものを用いることが多い。
 
しかしながら、CIRモデルで負の値にならないためには、モデルパラメーターの間にある条件が満たされていることが必要だ。これをフェラー条件という。
しかしこのフェラー条件は連続時間のもとで導出されたものなので、モンテカルロで時間を離散化している場合には、フェラー条件を満たしていても、時間グリッドの刻みが粗かったり、パラメーターの組み合わせがイマイチになっていると、マイナスになることがよくある。
 
パラメーターがイマイチになる理由は、以下のようなものだ。
クレジットモデルはクレジットスプレッドのボラティリティにキャリブレーションすべきものだが、そのようなマーケットデータがほとんどないため、CDSスプレッドにキャリブレーションするしかない。すると、ボラティリティの情報が入っていないデータに合わせにいくので、モデルパラメーターが不自然な組み合わせになることがよくある。
 
クレジットスプレッドのボラティリティとしては、CDSオプションのボラティリティがあるが、USDの短期ゾーンなどしかなく、ほとんどの場合、対応するボラティリティを取得できない。

参考文献

Modern Derivatives Pricing and Credit Exposure Analysis: Theory and Practice of CSA and XVA Pricing, Exposure Simulation and Backtesting (Applied Quantitative Finance) (English Edition)