金利スマイルの補間モデルとして業界標準になっているSABRモデルだが、弱点がいくつかある。
・スマイルのウィングをコントロールできるパラメーターがない
・低ストライクで確率密度がマイナスになる
1つめは、スマイルの両端を直接コントロールできるパラメーターがない点である。
確かにパラメーターνを変化させるとスマイルの曲率を変化させられるが、これだとATM付近の曲率も全体的に変化してしまう。
スマイルの両端を直接コントロールするモチベーションは、マーケットのCMSオプションに合わせることだ。
CMSオプションの評価は、市場ではレプリケーション法というロジックを用いるが、これがスマイルの端から端までのボラティリティを使う。
特に、高ストライクのスマイル形状の影響が大きいことが知られており、スマイルを端まで補外するロジックによって、かなり評価が変わってくる。
マーケットのCMSオプション価格を再現するには、スマイルの端をコントロールするパラメーターを動かすことでフィットさせる必要がある。
これを実現するために改善版SABRがいくつか提案されており、その1つのZABRモデルでは、ウィングをコントロールするパラメーターgammaが追加されている。
2つめは、バニラオプション価格をSABRモデルで出して、それに基づいて確率密度を逆算すると、低ストライクでマイナスになってしまう。
具体的には、バニラオプション価格の二階微分を数値的に出すと確率密度が得られる。
この確率密度は当然プラスにならないとおかしいが、Hagan近似によるモデルボラティリティの近似解には誤差が含まれるため、精度が悪いスマイルの左端では、マイナスになってしまうことが多い。
これはつまり裁定機会の存在を意味するため、理論的に矛盾が起こっていることになる。
これを回避するために改善版SABRがいくつも提案されており、NormalSABRやNoArbitrageSABRなどがある。これらはいずれも近似解ではなく、数値積分またはPDEで数値的にバニラオプション価格を求めるものだある。計算負荷は重くなるが、精度が増すため、負の確率密度を回避することができる。
—–