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解説
FX TARFの商品性については以前に書いた通りだが、その時価評価はどうするか。
これは典型的な経路依存の商品であるため、数値計算手法はモンテカルロ法を選択することになる。
FX TARFに限らず、ターゲットノックアウト条項が付いている商品は、モンテカルロ法を適用することになる。
なぜなら、累積クーポンがターゲットに到達したかどうかを判定する必要があるため、時間についてバックワードではなく、今日から将来に向かって計算するのが自然であるからだ。
逆に、早期償還条項がついている商品の場合はバックワードに計算する必要があるため、FDMやツリーが適している。
プライシングモデルはどうするか。
一般に、プライシングモデルは、
⑴バニラオプション専用のモデル
⑵各エキゾチック商品に用いるエキゾチック用のモデル
の2つに分かれる。
⑴はスマイルを補間補外するモデルであり、スマイルモデルともいう。
FX TARFの場合、スマイルモデルは為替スマイルを補間するモデルであり、Vanna-Volga法(バンナボルガ法)が一般的である。
そのほか、確率ボラティリティモデルであれば、HestonかSABR、あるいはそれらの変形版、になるだろう。
このスマイルモデルを為替のバニラオプションにキャリブレーションする。
その後、キャリブレーション結果のパラメータをインプットにして、⑵の、FX TARF用のプライシングモデルを回すことになる。
為替やエクイティの比較的満期の短いエキゾチック商品のプライシングモデルとしては、確率ローカルボラティリティモデルが一般的である。これは、
・ローカルボラティリティ部分により、今日のスマイルを完全に表現できる
・確率ボラティリティ部分により、将来のスマイル全体のシフトを正しく表現できる
という、いいとこ取りのモデルである。
FX TARFのような経路依存の商品について、特に、リスク値を実際の市場変動と整合的に求めるには、将来時点のスマイルの表現力が重要である。
なぜなら、TARFであれば、ターゲットにヒットするとノックアウトするため、それ以降のペイオフはゼロになることから、
・ターゲットにヒットしていない条件のもとで、
・将来時点から見たさらに将来時点の為替の分布が、評価に用いられるからである。
これは例えば、今日から見て1年後の為替レートXから、2年後の為替レートYに遷移する遷移確率が重要である、ということだ。
このように将来のスマイルに依存する商品には、ローカルボラティリティ部分に加えて、確率ボラティリティ部分を組み込んだプライシングモデルが必要になる。