デルタはオプションプライスをスポットで微分したものだが、そのオプションプライスをどちらの通貨建てで考えるかによってデルタが変わってくる。
BS式で計算されるような、通常のオプションプライスは、Domestic Currency建てである。例えばドル円のオプションであればプライスは円建て、ユーロドルのオプションであればドル建てで出てくる。これはドル円の為替レートは単位が円、ユーロドルの為替レートは単位がドルだからである。
よって、通常のデルタはこのDomestic Currency建てのプライスをスポットで微分したものであり、ここではDomestic Deltaと呼ぼう。
一方で、ドル円のオプションを売って、プレミアムは円建てで出るけれども、円建てではなくドル建てでポジションを考える人もいるわけである。
その場合のデルタは、円建てのプライスを為替レートで割って、ドル建てのプライスに直してから、為替レートで微分する。よって、分母にも為替レートが入ってくるので、分子のオプションプライス自体に加えて、分母も為替に依存することになる。これを微分するには積の微分あるいは商の微分を使うことになる。このように求めたものがForeign Currency建てのデルタであり、ここではForeign Deltaと呼ぼう。
Domestic DeltaとForeign Deltaは一致しない。そもそも単位の通貨が異なるわけだが、Foreign Deltaに外から為替レートをかけてDomestic Currency建てに直したとする。そのうえでDomestic Deltaと比較しても、オプションプライスを為替で割った分だけデルタが異なってくる。
このようにデルタの定義は、為替のどちらの通貨建てでオプションプライスを考えるかによって異なってくる。
それに加えて、スポットで微分するスポットデルタと、フォワードで微分するフォワードデルタに分かれる。
これだけでも、2種類×2種類で合計4種類のデルタが出てくる。マーケットクォートでは、通貨ペアとオプション満期によって、これらのいろんなデルタが使い分けられている。
ここで注意すべきこととして、人によって同じことを違う用語で言っている、ということだ。用語の使い分けとしては以下の3パターンがある。
(1)Domestic Delta / Foreign Delta
(2)Standard Delta / Premium Adusted Delta
(3)Pips Delta / Percent Delta
要するに、
・Domestic Delta = Standard Delta = Pips Delta
・Foreign Delta = Premium Adjusted Delta = Percent Delta
ということである。
このように、同じことを指しているけれども文献によって違う用語が使われているので、注意が必要だ。