ざっくり解説
マルチコーラブルのクレジットリンクスワップなど、エキゾチックなクレジットデリバティブの評価には、クレジットモデルが必要になる。ここで言うクレジットモデルとは、ハザードレートにダイナミクスを仮定して確率的に動かすモデルである。よくあるクレジットモデルは、ハザードレートがCIRモデルまたはCIR++モデルに従うというものだ。
このモデルのパラメーターをキャリブレーションするところで必ず問題になるのは、クレジットボラティリティとして市場から取得できるインプライドなデータがない、ということだ。海外の文献ではクレジットボラティリティとしてCDSオプションのインプライドボラティリティを使っていることが多いが、少なくとも日本の市場では観測できない。
ここで、クレジットモデルのパラメーターは2つのグループに分かれる。
・1つ目は平均水準に関連するパラメーター
・2つ目はボラティリティに関連するパラメーター
これらに対して、理想的には、以下のようにしたいところだ。
・平均水準関連のパラメーターはCDSスプレッドにキャリブレーションする
・ボラティリティ関連のパラメーターはCDSオプションのボラティリティにキャリブレーションする
しかしボラティリティのキャリブレーション対象がないため、ここで壁にぶち当たる。
実務での解決策は以下の2種類に分かれる。
⑴ボラティリティパラメーターはCDSスプレッドのヒストリカルボラティリティで固定し、残りのパラメーターを動かしてCDSスプレッドにキャリブレーションする
⑵CDSオプションの仮想的なインプライドボラティリティを、何らかの方法で作り、それに対してモデルをキャリブレーションする
⑴はそのままだが、⑵については、CDSボラティリティに何らかの仮定を置く方法である。観測できるインプライドなデータとヒストリカルなデータを用いて、CDSオプションのインプライドボラティリティを推定する。仮の例としては、インプライドCDSボラティリティを、スワップションボラティリティに、CDSスプレッドのヒストリカルボラティリティとスワップレートのヒストリカルボラティリティの比率をかけて求める、といった方法だ。