相関の推定方法には2種類ある。
⑴ヒストリカルデータから推定する
⑵インプライドなデータから推定する
相関の推定というと、⑴の方が先に思い浮かぶが、場合によっては⑵もよく用いられる。
これらは用途に応じて使い分けるものである。
⑴のヒストリカルデータから推定する方法は、
例えば以下のようなケースで使われている。
・バスケット型オートコーラブルのプライシングで、株価間の相関が必要なとき
・XVAプライシングで、金利・為替や、金利・株価など、異なるアセットクラス間の相関が必要なとき
これらはインプライドな情報があまりないからということで、ヒストリカルに推定することが多い。
⑵のインプライドなデータから推定する方法は、例えば以下のようなケースで使われている。
・金利エキゾチック商品のプライシングで、Liborマーケットモデルにおける、金利間の相関パラメーターを、スワップションマトリックスへのキャリブレーションにより最適化で求める
・金利エキゾチック商品のプライシングで、2ファクターのショートレートモデルにおける、状態変数間の相関パラメーターを、スワップションマトリックスへのキャリブレーションにより最適化で求める
・金利バニラオプションのプライシングで、SABRモデルの相関パラメーターρを、スワップションスマイルへのキャリブレーションにより最適化で求める
・為替バニラオプションのプライシングで、Hestonモデルの相関パラメーターρを、通貨オプションのスマイルへのキャリブレーションにより最適化で求める
これらのケースでは、相関以外のパラメーターと一緒に、最適化でまとめて推定される。
他には、以前にも書いたが、
・為替間の相関を、3通貨からなる3通りの為替ペアのボラティリティから逆算する
という方法もある。例えば、ドル円とユーロ円の相関を、ドル円、ユーロ円、ユーロドルの3つのボラティリティから逆算する。これをインプライドコリレーションと呼ぶことがある。
⑴と⑵の使い分けは要するに、
・相関の情報がボラティリティに織り込まれていると考えられて、
・そのボラティリティをきちんとマーケットから取ってこれる
ようなケースではインプライドを用いて、そうでないケースではヒストリカルを用いる、ということになる。
そして実は⑴、⑵に加えて、第3の方法がある。それは、
⑶相関が必要なエキゾチック商品のプライスが、Markit Totemのコンセンサスに合うように、試行錯誤で相関パラメーターを設定する
というものだ。この方法もけっこうよく採用される。いわゆるトレーダーインプットやディーラーマークと言われるものに近い。