クラシカルなHestonモデル

Hestonは確率ボラティリティモデルで最も一般的なもので、確率的に動く分散がCIRモデルに従うモデルである。バニラオプション価格が準解析的に出るため扱いやすく、エクイティや為替においてスマイルモデルやプライシングモデルとしてよく用いられる。

古典的なHestonモデルは、パラメーターがフラットなもので、設定すべきモデルパラメーターは5つある。
 
Kappaは分散の平均回帰スピードで、満期方向のボラティリティの減衰スピードをコントロールする。
Thetaは分散の平均回帰水準で、スマイルの水準をコントロールする。
Sigmaは分散のボラティリティで、スマイルの曲率をコントロールする。
Rhoは原資産と分散の相関で、スマイルの傾きをコントロールする。
V0は分散の初期値で、スマイルの水準をコントロールする。
 
この5つのパラメーターをボラティリティサーフェイス全体に合わせる。つまり、満期xストライクの数だけあるバニラオプションに対して、これらのパラメーターをフィッティングさせる。パラメーターはフラットなので、全ての満期に対して同じパラメーターの組み合わせが用いられる。

 

実際にやってみるとわかるが、これだとあまりフィッティングしない。当然だが、バニラオプションの数に対してパラメーターが5つと少なすぎるのである。サーフェイス全体にキャブレーション誤差が発生する。
 
そこで、実務では満期ごとに異なるパラメーターを設定することになる。すると、今度は、満期ごとにフィッティングは良くなるものの、隣同士の満期のパラメーター値が全然違うものになる。例えば、同じパラメーターSigmaでも9Mと1Yで全然違う値になってしまう。同じパラメーターのキャリブレーション結果を満期方向に並べるとかなりガタついて所々ジャンプする形になる。
取引評価時には、中途半端な満期に対して、まず満期方向にパラメーターを適当に補間してから、その結果を用いてHestonモデルを作り、ストライク方向に補間することになる。パラメーターが満期方向にガタついていると、補間したパラメーターから出来上がるHestonスマイルが、隣接する満期のものと大きく異なってしまう。
このような状況を、キャリブレーションが不安定になっているというが、これを改善するために、動かすパラメーターを減らすことになる。このときにモデル自体にひと工夫するのだが、その話は次回にしよう。

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