モダンなHestonモデル

古典的なHestonモデルでは動かすパラメーターが5つあったが、現代的なHestonモデルではこれを3つに減らす。

確率的な分散を表す確率過程Vの代わりに、Vをその初期値V0で割って基準化したものをモデル化の対象とする。そうすると新しい分散は初期値が1になるため、初期値パラメーターがなくなる。平均回帰水準パラメーターThetaも基準化される。
 
これによってスマイルの水準全体をコントロールするパラメーターがいなくなるが、その代わりに、分散の平方根の外側に、新しいパラメーターSigmaを乗じる。このパラメーターでスマイル水準をコントロールする。もともとあった分散のボラティリティパラメーターSigmaはEtaなどと書き換える。
 
これらの書き換えに伴い、バニラオプションの価格式も書き直す必要がある。
 
平均回帰スピードのKappaは満期によらず適当な値でフラットに固定する。
 
結局、動かすパラメーターは、
 
・スマイル水準を表す、基準化された分散のレバレッジパラメーターSigma
 
・スマイルの傾きを表す、原資産と分散の相関パラメーターRho
 
・スマイルの曲率を表す、分散のボラティリティパラメーターEta
 
の3つに集約される。あとはこれらが満期の数だけあるとして、満期ごとにキャリブレーションすればよい。
SABRモデルでもそうだが、キャリブレーション対象とするフリーパラメーターを、水準、傾き、曲率の3つに集約して、その他のパラメーターは固定することにより、異なる満期間でキャリブレーション結果が安定する。
 
このモダンなHestonモデルは、某情報ベンダーのロジックドキュメントにも書いてあり、現在では一般的なもののようだ。
 
古典的なHestonモデルでも、スマイルの水準に関連するThetaとV0の間に何か制約条件式を与えて、バラバラに動いてしまわないようにして実質的にパラメーターを1つ減らし、Kappaを適当な値で固定することによっても、キャリブレーションの安定性は改善するのではないかと思われる。

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