バリアオプションとスマイル

為替系で最も一般的なエキゾチックオプションはバリアオプションである。

シングルバリアやダブルバリアなどがあるが、ここではシングルバリアを対象とする。
 
バリアオプションの評価には、
・スマイルを反映する方法
・スマイルを反映しない方法
がある。
 
スマイルを反映しない方法は、ブラックショールズモデルの解析解を用いるものだ。
 
このモデルでは、バニラオプションのインプライドボラティリティが、ストライクによらずフラットになる。
これはつまり、為替レートが厳密に対数正規分布に従っていることになる。
 
ブラックショールズモデルでは、バニラオプションに加えて、バリアオプションにも解析解が存在する。
このため、マーケットのボラティリティを公式に代入すれば、価格が得られる。
このボラティリティというのは、バニラオプションのインプライドボラティリティのことである。
 
しかしこれでは、市場がインプライしている為替レートの分布と矛盾してしまう。
なぜなら、市場の為替レートの分布は、対数正規分布ではないからだ。
実際には、対数正規分布や正規分布など、明確に名前がついているような分布ではないため、市場の分布はXXXX分布だ、などと言うことはできない。
 
市場の分布は、ボラティリティスマイルの形で見ることができる。
このスマイルを何らかの方法で補間することで、バニラオプション価格をストライク方向に二階微分すると、密度関数が得られる。
その関数形は、明らかに対数正規分布や正規分布などとは大きく異なる。
 
・スマイルを反映しないで解析解を用いる
ということは、
・為替レートが対数正規分布に従う
と仮定していることを意味するため、市場と乖離が生じる。
市場のバニラオプション価格も再現しないし、市場のバリアオプション価格も再現しない。
市場と整合的に評価するためには、スマイルを反映する必要がある。
 
バリアオプションの特徴は、ペイオフが行使レートのみならず、バリアレートにも依存する点だ。
 
さらに、行使レートは満期しか関係しないが、バリアレートは、バリアの観察期間中ずっと関係してくる。観察期間中に為替がバリアに到達したかどうかを、ずっとモニタリングしないといけない。
これはつまり、多数の満期日全ての時点において、為替がバリアに到達する確率を見積もらなければ正しく評価できないことを意味する。
 
これに加えて、満期において為替が行使レートに到達する確率も見積もらないといけない。
 
この到達確率というのは、市場のバニラオプション価格から逆算される。
市場にはスマイルが存在するため、逆算された到達確率は、対数正規分布のものとは異なる。
 
一方、ブラックショールズモデルでは、
・バリアに到達する確率も対数正規分布から求めて、
・行使レートに到達する確率も対数正規分布から求める
ということを行っているため、市場の分布と整合的な評価にはならないわけだ。
 
スマイルを反映する方法はたくさんありすぎてここには書き切れないほどだ。
バリアオプション市場でスタンダードになっているのは確率ローカルボラティリティモデルである。
確率ローカルボラティリティモデルについては、またの機会に書きたい。
 
 

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