確率ボラティリティの平均回帰パラメーターは何のためにあるのか?

ボラティリティの期間構造を統一的に説明するためである。

ここで、ボラティリティの期間構造は、金利の期間構造とは全く異なる意味なので注意されたい。

・ボラティリティの期間構造は、オプション満期によってスマイルの形状が異なることを指す。よくあるのは、満期が長いほどスマイルの尖り具合がなだらか(フラット)になることを指している。

・金利の期間構造は、期間の異なる金利間の相関を指す。金利は期間が異なっていても、互いに相関を持ちながらシステマティックに動く(パラレルシフト、スティープニング/フラットニング、など)ので、そのことを指している。

確率ボラティリティに平均回帰性がないとどうなるか。長期に行くほど、ボラティリティが現在の値とはかけ離れた水準になってしまい、そのまま戻ってこなくなる可能性がある。しかし現実にはボラティリティは平均回帰性を持つことが知られており、そのようなことは起こらないと考えられている。

確率ボラティリティに平均回帰性を入れるとどうなるか。平均回帰性を持つ確率過程で最も簡単なOU過程を考えると、時点tにおける分散は以下のような形で書ける。

(η^2)/(2κ) {1 – exp(-2κt)}

ここで、ηはボラティリティのボラティリティ、κは平均回帰の強さを表すパラメーターである。長期になるほど、κによってボラティリティの分散が小さくなっていくことがわかる。なお、ボラティリティの分散、つまりボラティリティのボラティリティは、スマイルの曲率、つまりスマイルの両端の上がり具合(スマイル全体の尖り具合)を表す。平均回帰性があることによって、オプション満期が長期になるほどスマイルがフラットになることを描写できる。

ちなみに、SABRモデルでは確率ボラティリティに平均回帰性が入っていない。このため、実際にキャリブレーションしてみると、ボラティリティのボラティリティは、短期ゾーンでは異常に大きくなり、長期ゾーンでは小さくなる。これは、平均回帰性が入っていないため、同じモデルパラメーターの組み合わせによって満期の異なるスマイルを統一的に説明できないからである。結果的に、満期の長さによってボラティリティのボラティリティが異常に大きく変化し、そうすることで、満期の異なるスマイルたちに合わせに行っているわけだ。