邦銀のおかしな無担保通貨スワップ評価

一部の日系金融機関などでは、無担保取引が未だに昔ながらのLIBORディスカウンティングのままになっているところもあるだろう。
この、昔ながらLIBORディスカウンティングというのは、USD/JPYの通貨スワップの場合、

・USDサイドはUSDスワップからシングルカーブで生成したカーブを用いて、USD LIBORフラットで割り引き

・JPYサイドはJPYスワップからシングルカーブで生成したカーブを、通貨ベーシスで調整したカーブ(いわゆるクロスカレンシーカーブ)で割り引き

というものである。
これはつまり、自社の無担保ファンディングについて、
USDは、USD LIBOR3Mフラットでファンディングできる一方、
JPYは、JPY LIBOR6Mよりも通貨ベーシスの分だけ割安にファンディングできる、

と仮定していることになる。

しかし、この仮定が適切なのは、USDでファンディングしている米系金融機関であろう。

一方、JPYでファンディングしている日系金融機関にとっては、上記の仮定には何の根拠もなく、適切とはいえないだろう。

また、これは、無担保ではなくJPY担保であったとしても、おかしな評価である。

LIBORをOISに置き換えて考えれば、上記のロジックは、USD担保ベースの評価になっているため、ほとんどの通貨スワップがJPY担保の邦銀にとって、適切ではない。

もっとも、上記のようなLIBORディスカウンティングを無担保取引に対して適用することは、邦銀がOISディスカウンティングを導入する前に、実際に行っていたことである。
ところが、このような方法は、単に外銀がそうやっているのを、邦銀が何も考えずに真似していただけなのである。
通貨をまたぐ取引について、USDはUSDフラットで割り引き、JPYには通貨ベーシス(負の値)を上乗せしたカーブで割り引く、というのは、邦銀にとっては何の根拠もない方法だったわけである。
ところが、最近までは多くの邦銀でそのような方法が採用されており、外銀の提示する時価にある程度近いこともあり、それが市場慣行であるとして、何の違和感もなく用いられてきた(他の邦銀もそうやっているという意味で、当時の市場慣行であったのは確かである)。

しかし、近年になって、有担保取引にOISディスカウンティングを導入するに伴い、無担保取引の割り引きについて、理論的に整理をし始めたところで、この方法が、「外銀にとっては自然だが、邦銀にとってはおかしな方法である」ことに気付き、計算ロジックの修正が行われた日系金融機関が多いのである。
しかし、まだその修正が行われていない日系金融機関については、理論的根拠に乏しい上記の方法が、未だに採用されてしまっている。

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