バンナボルガ法によるバリアオプションのプライシング(時価評価、価格計算)

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はじめに

前回の記事では、Vanna-Volga法を為替スマイルの補間ロジックとして用いる話を書いた。
これはつまり、Vanna-Volga法をバニラオプションのプライシングモデルとして用いることを意味する。
今回は、Vanna-Volga法をバニラオプションではなく、エキゾチックオプションのプライシングモデルとして用いる話である。

Vanna-Volga法の考え方を復習

通貨オプションでメジャーなエキゾチックオプションといえば、ノックアウトオプションやノックインオプションといった、バリアオプションである。

バンナボルガ法でバリアオプションをプライシングする場合は、バニラオプションの場合と比べて少し修正を加えることになる。

バンナボルガ法によるバニラオプションのプライシングは、

(Black-Scholes式) + (スマイルによる調整項)

となる。
ちなみにこの調整項は、

調整項 =
25デルタコールのヘッジポジション
× (25デルタコールのボラティリティで評価した25デルタコールオプションのBSモデルによるプライス
- ATMボラティリティで評価した25デルタコールオプションのBSモデルによるプライス)
+25デルタプットのヘッジポジション
× (25デルタプットのボラティリティで評価した25デルタプットオプションのBSモデルによるプライス
- ATMボラティリティで評価した25デルタプットオプションのBSモデルによるプライス)

という形をしている。

バリアオプションのプライシング

バリアオプションのプライシングでは、この調整項の全体にさらなる調整を加える。ノックアウトオプションの場合、

・バリアに到達しない確率をBlack-Scholesモデル前提で求めて、
・その確率をこの調整項全体に乗じる

ことにより評価する。
バリアに到達するとオプションは消滅するため、その分、スマイルによる調整項も小さく評価しよう、というものである。

ノックインオプションはIn-Outパリティから逆算する。つまり、バニラオプションのVanna-Volgaプライスから、ノックアウトオプションのVanna-Volgaプライスを差し引くことで求める。

しかし、
・ノータッチ確率をBSモデルで求めているのに、
・プライシング自体はBSモデルではなく、それに調整を加えたバンナボルガ法で行なっている、
というのは、明らかに整合性がとれていない。

きちんとやろうとすると、バンナボルガ法前提でノータッチ確率を出して、それをバンナボルガ法にインプットしてプライスを出すことになるだろう。
しかしながら、そもそもノックアウトオプションをプライシングしたいのだから、その段階では、バンナボルガ法によるノータッチ確率はわからない。
つまりノックアウトオプションが評価するには、その前にノックアウトオプションを評価できていないといけない。というわけで、これでは処理が循環してしまう。

こういう状況では、何か初期値を与えてループで回し、収束計算する必要が出てくるが、無駄に計算負荷がかかってしまうため、実務では、ノータッチ確率はバンナボルガ法にとってはインプットとして扱い、ノータッチ確率の計算にはBSモデルを使う、というケースが多い。

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