コロナショックで株価暴落が止まらない。米株は連日サーキットブレーカーが発動しており、見たことないようなマーケットになっている。
そんななか、金利系の人たちの関心事は、通貨ベーシスの急拡大である。ドル円ベーシスはマイナス140bp近くと、フリーフォール的な下がり方を見せている。通貨ベーシスの拡大はマーケットストレス時の風物詩であるが、改めてここで、その影響を復習しておく。
ドル円ベーシスはおおざっぱに言うと、
・円を貸してドルを借りてこようとすると、
・ドル返済時に支払う金利が
・マイナスのベーシスだけ上乗せされてしまう、
というものである。ベーシスのマイナス幅が拡大すればするほど、ドル調達サイドは上乗せの金利支払いが求められる。
これが将来キャッシュフローの割引に与える影響を考える。
日本の金融機関は、有担保取引は円担保、無担保取引は円ファンディングで評価していることが多い。この場合、通貨ベーシスが割引金利に影響を与えるのは、外貨キャッシュフローの割引である。ドルを円担保ベースで割り引く場合、その割引金利は、通常のドル金利に加えて、マイナスの通貨ベーシスが上乗せされてしまう。
ベーシスが拡大すると、ドルなど外貨の割り引きが強くなる。
・ドルのキャッシュフローは時価が低下し、
・円のキャッシュフローはベーシスの影響は受けない。
ベーシスはここ最近で100bp以上、マイナス方向に下がっている。円金利の変動に対して通貨ベーシスの下げ方がかなり大きいといえるだろう。そうすると円サイドの時価変動に比べて、ドルサイドの時価が大きく下がる。
・ドルの受けであればネットの時価は下がり、
・ドルの払いであればネットの時価は上がる、
ということになるだろう。
一方で、地銀などはいまだに、通貨ベーシスの考慮方法がおかしなことになっているところも多いらしい。円担保の取引であるにも関わらず、
・円サイドにベーシスを上乗せして、
・ドルサイドはLiborフラットで割り引く、
という、目を疑うような評価が行われている場合もあるようだ。こうなると、ベーシスを考慮する方向が正反対になってしまう。
・本当はドルの割引金利を上げないといけないのに、
・実際は円の割引金利を下げてしまっている。
円金利が下がるのは、符号がマイナスのベーシスを足してしまっているからだ。
以上を言い換えると、
・ドルサイドの時価を下げないといけないのに、下げることなく、
・円サイドの時価を上げなくていいのに、上げてしまっている、
ということになる。