確率ローカルボラティリティモデルのキャリブレーション(補足)

はじめに

今回は以下の記事の補足をしていく。

キャリブレーションの手順

キャリブレーションの手順はだいたい以下の通りであった。

⑴ベースとなる確率ボラティリティモデルを市場のバニラオプションのスマイルにキャリブレーションする。
⑵Mixing Weight(よくギリシャ文字のエータ\(\eta\)で表す)を市場のダブルノータッチオプションなど、流動性のあるエキゾチックオプションのプライスを見ながら、適当に設定する。
⑶⑴と⑵の結果を用いて、Leverage Functionを市場のバニラオプションのスマイルにキャリブレーションする。

バニラオプションへのフィッティング

(1)でHestonなどの確率ボラティリティモデルをいったんキャリブレーションし、そのパラメーターを最終的に使うが、バニラオプションへのフィッティングという意味では、結局のところ、後ほど(3)の段階でLeverage Functionで調整されることになる。(2)で設定したMixing Weightによって、確率ボラティリティはバニラプライス全体のうち一部にしか寄与しないので、残りの部分をLeverage Functionで穴埋めすることになる。

スマイルのダイナミクスの表現

スマイルのダイナミクスについて、確率ボラティリティモデルの代表格SABRモデルであれば、パラメーターである \(\beta\) によって、原資産価格と確率ボラティリティの関係が明示的に与えられており、この \(\beta\) によってスポットが動いたときのATMボラティリティの変化が決まってくる。とはいっても確率ボラティリティ的な動き方、すなわちスティッキーデルタ的な動きになる。

一方で、SLVモデルではMixing Weightで確率VolとローカルVolのブレンド具合を調整することによって、スマイルのダイナミクスがコントロールされる。確率Volに寄せれば、スティッキーデルタ寄りのダイナミクス、ローカルVolに寄せればスティッキーストライク寄りのダイナミクスになるだろう。例えばHestonSLVでMixing WeigntをHestonに完全に寄せれば、実質的にHestonモデルと同じになるため、スマイルのダイナミクスも確率ボラティリティモデル寄りになるだろう。

なお、Mixing Weightをヒストリカルデータから推定する方法については、管理人の知る限り今のところ見たことはない。HaganのSABR論文ではパラメーター \(\beta\) をフォワードレートとATMボラティリティのヒストリカルデータから推定する方法が紹介されているが、それを念頭に置いたものであった。

参考文献

スマイルのダイナミクスについては、以下のDerman本が基本から平易に解説している。

HestonSLVモデルについては例えばこちらのスライドが参考になる。

SLVモデルについて実務家が学ぶには、以下のAusting本がよい。数式の意味を説明しながら、実務的な話題も多く取り上げている。

為替の文脈でSLVモデルについて言及している本としては、以下のClark本がある。

エクイティのSLVモデルについては、例えば以下のテキストに記述がある。