インフレーションデリバティブのプライシングモデルには2つのアプローチがある。
⑴名目金利と実質金利をモデリングし、インフレ率や物価指数は為替レートのアナロジーでモデリングする
⑵インフレ率のショートレートを直接モデリングする
⑴と⑵の説明の前にまず、基本事項の準備をする。
名目の資産価格 / 物価指数=実質の資産価格
であるから、
名目の資産価格 = 物価指数 × 実質の資産価格
となる。
ここで重要なのは、上の式が以下の式と似ている、ということである。
国内通貨建ての資産価格 = 為替レート × 外国通貨建ての資産価格
要するに、物価指数を、実質価格から名目価格に変換する為替レートとみなせる、ということである。
対応関係としては、
・名目価格は、国内通貨建ての資産価格に、
・実質価格は、外国通貨建ての資産価格に、
それぞれ対応していることがわかる。
⑴のアプローチはまさにこれを活用するものである。
よくあるのは、名目金利と実質金利にハルホワイトモデルを使い、物価指数を為替レートと同様に、HW-HW-BSモデルでモデル化する。
このとき、
・名目金利の割引債価格
・実質金利の割引債価格
がいずれも対数正規分布に従い、
・物価指数も対数正規分布に従う
ことになる。
物価指数のドリフトは、名目金利と実質金利の差分となる。
ボラティリティはDeterministicとする。
これは完全に金利を確率的に動かす場合の為替レートのモデリングと同じである。
一方で、⑵のアプローチは、インフレ率のショートレート、つまり物価指数のドリフトを直接モデリングする。
よくあるのは、インフレ率のショートレート
にハルホワイトモデルを適用する、というものだ。
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