ZABRモデルによるボラティリティ補間ロジック

はじめに

前回はZABRモデルの概要のみを説明した。

考え方:複雑なモデルの分布を変えずに、シンプルなモデルに変換する

ZABRモデルによるマーケットボラティリティの補間方法には、大きく分けて3通りある。

⑴Blackモデルに変換する方法
⑵Normalモデルに変換する方法
⑶Local Volatilityモデルに変換する方法

実はこれらの方法は全て、SABRモデルにも適用できる。なぜならSABRモデルはZABRモデルの特殊な場合だからである。

BlackモデルやNormalモデルに変換する

⑴と⑵の方法は、SABRモデルのHagan近似と似たようなアプローチである。
つまり、SABRモデルやZABRモデルと同じプライスになるように、BlackボラティリティあるいはNormalボラティリティを逆算する、というアプローチだ。

これはつまり、SABRモデルやZABRモデルを、シンプルなBlackモデルあるいはNormalモデルに変換している(マッピングしている)ということである。
いったんBlackモデルまたはNormalモデルに変換できれば、あとはBlackボラティリティまたはNormalボラティリティを解析解に代入するだけで、任意のストライクのバニラオプションプライスが出る。

Local Volatilityモデルに変換する

⑶の方法はAndreasenとHugeが初めて提唱した彼ら独特のアプローチである。

SABRモデルやZABRモデルをLocal Vilatilityモデルに変換(マッピング)する。
すなわち、Local VolatilityモデルのプライスがSABRモデルやZABRモデルと同じプライスになるように、Local Volatilityを逆算する、というアプローチである。

いったんLocal Volatilityモデルに変換できれば、あとは、

・Local Volatilityの公式として知られるDupireのPDEにLocal Volatilityを代入する
・そのPDEをバニラオプション価格について数値的に解く
・すると、PDEのストライクグリッドにおけるバニラオプション価格が一斉に求められる

というわけである。

ボラティリティ補間ロジック

概要は以上だが、より詳細にマーケットボラティリティの補間ロジックをまとめると、以下の通り。

BlackモデルやNormalモデルに変換する場合

  • マネーネスをインプライドボラティリティで除した状態変数xを導入する
  • 一般的なSLVモデルに対してShort Maturity Expansionを適用することで、xについてのPDEを得る
  • これを基にZABRモデルのケースでxを任意のストライクに対して求める
  • そこからxの定義に従い、インプライドボラティリティを(オプション価格を経由せずに)直接求めることもできる。これが⑴と⑵の方法である。

しかし、その場合には結局SABRモデルと同様、負の確率密度が生じてしまう。
それを避けるのが⑶の方法である。

Local Volatilityモデルに変換する場合

⑶の方法の計算手順は、以下の通り。

  • SLVモデルにおけるxのPDEから、(Deterministic) Local Volatility (LV)モデルにおけるxのODEを求め、xとLocal Volatilityの関係を導出している。
  • このことから、SLVモデルのxが求まれば、その同じxからLocal Volatilityが得られるため、状態変数xを経由してSLVモデルをLVモデルに変換することができる。このSLVモデルの状態変数xから求まるLocal VolatilityのことをEquivalent Local Volatilityと呼ぶことがある。
  • 同じロジックを、SLVモデルの特殊ケースであるZABRモデルに適用することで、LVモデルに変換することができる。
  • 求めたEquivalent Local VolatilityをDupireのPDEに代入して、これを完全陰解法で解くことにより、PDEのストライクグリッド上の価格を一斉に求める 。
  • あとは価格をボラティリティに変換すればスマイル補間が完了する。

このように、BlackモデルやBachelierモデルではなく、Local Volatilityモデルにマッピングすることで、無裁定性が保証され、確率密度が負になる問題を回避することができる。
なぜなら、大まかに言って、Local Volatilityが複素数にならず実数の範囲で得られるということは、無裁定であることと関連があるからだ。

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