非上場株式のストックオプションのプライシング(時価評価、価格計算)と、完全市場の仮定

非上場のベンチャー企業がストックオプションを発行するケースがあるが、その発行価格はどう検証すればよいだろうか。

 
仮に上場企業の株式オプションであれば、古典的なブラックショールズモデルでプライシングすればよいが、非上場だとかなり話が違ってくる。
 
上場企業の株価は市場で毎日観察可能だが、非上場企業の株価は、何らかの評価会社に依頼する必要があり、多くても四半期ベースでしか株価がわからない。
 
流動性についても、上場株であれば、銘柄によってかなり流動性にばらつきがあるものの、売りたいときに売れると仮定するのは、許容できるだろう。一方で、非上場株は流動性がなさすぎて、売りたいときに売れるわけではない。
 
これらを考慮すると、非上場株のオプションにブラックショールズモデルは本来使うべきではないだろう。
ブラックショールズモデルに限らず、数理ファイナンスにおけるデリバティブプライシングの理論は、主に次のような仮定のもとに成り立っている。
 
・原資産価格は市場でいつでも観測できる
・原資産は市場でいつでも売買できる
・原資産は市場で買いからでも売りからでも入れる、つまり空売り規制がない
・その他、取引コストなどは存在しない
 
・裁定機会は存在しない
 
最後の1つだけは専門的で少し特殊だが、それ以外の仮定はよく、完全市場の仮定と呼ばれる。
最後の1つは、無裁定の仮定であり、非常に有名なものである。
無裁定の仮定を入れるためには、そもそも完全市場の仮定が入っていないと話にならない。
 
非上場株については、完全市場の仮定を認めるのはかなり困難だと言わざるを得ない。さらに、無裁定の仮定を置くのはあまりにも現実から乖離しているだろう。そもそも原資産の株価すら年に数回しか観測できないうえに、空売りも困難だと考えられる。
 
それにも関わらず、実務では、非上場株のオプションをブラックショールズモデルで評価するケースが見られる。
株価は評価会社に依頼して取得し、
ボラティリティは類似の上場企業について株価のヒストリカルボラティリティを用いるようだ。
これらのインプットを古典的なブラックショールズ式に代入する。
 
このような評価に理論的根拠は皆無と思われるが、それ以外に良い方法がないから消去法で採用されているものと考えられる。
数理ファイナンスにおけるデリバティブプライシング理論を捨てるとなると、伝統的な経済学の均衡アプローチくらいしかないだろうが、実務での計算に応用するのは困難だと思われる。
 
 

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